パンゴンツォへの道のり

インドのパンゴン湖に行きたい。 インドのグルガオンで働いています。

2018年12月


インド映画『パッドマン 5億人の女性を救った男』(以下、『パッドマン』)が12月7日から全国公開されています。

南インドのタミルナードゥ州出身の社会起業家である、アルナーチャラム・ムルガナンダム氏の伝記フィクションムービーです。


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妻が生理(月経)の時に、部屋から隔離されて過ごす慣習や、清潔なナプキンではなく雑巾かと思うほどの布を洗って繰り返し使うことに対して疑問を持ち、なんとかしたいと思ったのが始まり。

それから自身で試行錯誤、「トライアンドエラー」(トライアンドフォルス)を重ね、「普通」のナプキンの製造に成功。

それに加えて、自分一人で作るのではなく、女性がナプキンを作り販売できるようにする仕組みを作り、女性の自助を推し進めています。



上記のような活動を通して、ムルガナンダム氏は、発明の賞や国からの褒賞も受賞しており、フィクションはあれど映画でもその活動の素晴らしさが描かれています。

そういったムルガナンダム氏の活動については他のたくさんの記事に頼るとして、私は映画『パッドマン』が何をしたかを紹介したいと思います。



というのも、インドで公開されたのは今年の2月9日で、その時から、映画についてのインターネット上での盛り上がりを見ていました。

そして今回、実際に映画を観た時に、ムルガナンダム氏の活動だけでなく、パッドマンチームがやろうとしたことも思い返して涙が溢れてきました。

だから、これも知ってほしいな、と思ったんです。


念の為。私の知る部分は一部で、全ての現象を網羅しているわけではありません。
情報元を明示するためにTwitterリンクをそのまま貼ります。(※不具合で貼れなかったので後程更新します。)



映画『パッドマン』がしたこと1
ムルガナンダム氏の活動を広めた

これは映画の効果として当然ではありますが、元になったムルガナンダム氏の活動と、インドの実情と課題とを、より広く知ってもらうことに繋がりました。知ってもらいやすくなりました。

それも脚本や演出、役者の力、マーケティングあってこそです。



映画『パッドマン』がしたこと2
#padmanchallenge によって生理のタブーを打ち破ろうとした

TwitterやInstagram、Facebookなどで、有名無名問わず #padmanchallenge というものが一時期アップされていました。

やることは、ナプキンと一緒に映った写真をSNSにアップするものでした。

これはインド公開当時の動きで、個人的には、使用する立場としてナプキンを見てしまうのであまり好きではなかったのですが、日本公開後に映画を観て少し理解できました。

男性が、自分の妻の生理の心配をすることも、ナプキンを作って助けようとすることも、嫌がられるんです。
話題に出すこともはばかられるんです。
生理期間中は外のベランダで過ごさなきゃいけないんです。穢れとされているから。

でも、初潮が来たら派手なお祝いをするんですよ。赤飯どころじゃない。なんなん?

(映画は2001年前後のことを描いていますが、変わらない現状もあるので現在形にしています。)

そんな状況の中で、ムルガナンダム氏のチャレンジを皮切りに#padmanchallengeは広がっていきました。

主演メンバー以外でタグ付けされて#padmanchallengeを掲げたトウィンクル・カンナーという人のことも知っていてほしいです。

この方、本映画の原作者でありプロデューサー、そして主演のアクシャイ・クマールの妻である人です。


「私の手にはナプキンがありますが、これについて何も恥ずかしがることはないんです。自然なこと!毎月の生理現象なんです。#padmanchallenge この文をコピーペーストして、ナプキンと一緒に写真を撮ろうと友人に呼びかけましょう。私はアーミル・カーン、シャバーナー・アーズミー、ハルシュ・ゴエンカにお願いしたいと思います。」

そうして、多くの有名人、一般の人たちが #padmanchallenge とハッシュタグをつけ、ナプキンと一緒の写真をSNSにアップしていきました。


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目的は、生理の話題を「普通」のことにすることだったんです。

どこでもどんな時でもナプキンをオープンにして人前で扱うようになってほしいとまでは誰も思ってませんよ。

親とさえ生理のことを話せないせいで、不便を抱えたり、辛い思いをしていたり、病気が進行していったりすることがあります。本当にあるんです。

それを打開したかったんだなあと、映画を見てから気付きました。

※こういったChallengeはやる自由、やらない自由があるので、やってないからダメってことでもないです。



映画『パッドマン』がしたこと3
学校教材としての視聴覚資料ができた

みなさんも学生時代の授業で、映像を通してたくさんのことを学んだと思います。

映画でも出てきますが、公のこととして触れてはならない、男性が関わってはいけないとされていた(されている)生理をテーマに、人間の尊厳を守ることや、女性が継続して勉強することや働ける状況を社会として取り組み生み出すこと、何事も諦めず繰り返し挑戦する姿勢を打ち出しています。

現地の性教育や人権教育がどんなものか私は明るくないですが、映画を通して、若い世代にどんどん理解が広がっていく機会が増えたように思います。

製作側の、若い世代こそ知ってほしいという気概も感じました。

そして、映画が残り続けることで、資料のひとつとして未来の若者にも知る機会を提供できるようになったと思います。

ちなみに、スラムの女性達に無料で映画鑑賞してもらったり、女学生が校外学習として先生と共に映画鑑賞した報告もありました。



映画『パッドマン』がしたこと4
インド国内の200の主要駅にナプキン自動販売機と焼却炉が設置されることに

これ、インドの駅事情を知らずよく読み取れてない私が悪いんですが、焼却炉って…?サニタリーボックスのこと?

とにもかくにも、鉄道会社が駅にナプキン販売機の設置を推進することは発表されており、それに伴って、それを製造する女性の雇用も新しく生まれそうな期待があります。
(インドでゆっくり確認してみますね。)

この他にも、マハラシュートラ州内60ヶ所に渡ってナプキン販売機が設置されたり、一部の映画館では無料でナプキンが手に入るようにもなりました。

というか、マハラシュートラ州の動きが凄かった。
1年間、10,000人の女性に対してナプキンのサポートをするとか、議会のパネルディスカッションで生理の話題を出すとか。
オリッサ州でも無償提供の話が出ていました。



こういった形で、ムルガナンダム氏だけでなく、映画の『パッドマン』チームも、生理のタブーを無くそうと、女性の社会進出をアピールしようと動いてきたのでした。

なので、映画の国連スピーチの部分では、主演のアクシャイ・クマールの熱に圧され、これらを思い返して感泣……。

こういった視点も頭の隅に入れて映画を楽しんでもらえたらな、と思います。


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映画『ライフ・オブ・パイ』を観ました。
インドの俳優イルファン・カーンが出ており、彼の演技を見たくなってU-NEXTでレンタル購入。

いやはや、参った……。
予備知識を全く入れず、虎と少年が共に旅をして最終的に心を通わせるありがちな冒険譚かと思っていたら全く違う話でした。

最終的にめりめりのめり込んで観てしまいました。

私の琴線に触れたのが何なのか知りたくて、原作を読み映画を何度も観ました。

種明かしをしているつもりはないのですが、物語の内容を書いてはいるので、できれば原作や映画に触れた後に読んでほしいです。


ストーリー

インドで動物園を営む家族がカナダに移住のため船で動物と共に移動していたところ、その船が沈没。
救命ボートに一人残された少年だったが、そこにはベンガルトラも乗っていた……。



まずは映画について

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タイトル『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』
公開:2013年1月24日 (日本)
監督:アン・リー
俳優:スラージ・シャルマ、イルファン・カーン、タッブー、レイフ・スポール

観終えてすぐは意味がわからず、少し考えてから今まで観ていたものが繋がって、ゾッと怖い気持ちになりました。

まとめて言うと、「信仰と少年の成長の物語」。

主人公・パイの感じる恐怖はどれほどのものだったかと。
自分でも抑えられない荒ぶる感情、信仰を追いやってしまうほどの食べることへの欲求、着く先も着くのかさえもわからない海の上での不安。
それらと上手く付き合う方法があれだったのか、と崩れ落ちるような気持ちになりました。

いろいろな宗教に興味を持ち実践しようとするパイは、父親に「それは何も信仰していないのと同じだ」と指摘される。
旅を経て、いくつもの宗教への信仰が変化したわけではないようだけれど、自分を見つめ、克己心を養いながらも、現実と理想との間の苦しく辛い葛藤があり、神の存在とは何かといった数々の難題に立ち向かったんだろうなあ。


◆アカデミー賞4部門受賞の映像美

原作を読んで益々感じたことですが、映像表現が巧み。

オープニングから、何かわからないけれど大事なことが始まった……と引き込まれるほどに輝きを放つ命。
映画『オーシャンズ』を見ているかのような生き物たちの美しさと躍動感に加えて、その神秘性。
CGが、他作品と比較して精緻でリアルかつ目新しいというわけではないものの、やっぱり神秘性の表現には脱帽。一見の価値あり。

荒れ狂う嵐の海とそれに立ち向かおうとするパイの狂気、怯える虎のシーンは忘れられず、高い波を見る度にパイのことを思い出してしまいます。
このシーンで「なんだか凄い映画を観てしまった」と思いましたが、その感想が覆ることはなかったです。


それから原作について

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名:パイの物語 (Life of Pi)
著:ヤン・マーテル
訳:唐沢則幸

どこの書店に行っても在庫がなく、竹書房のサイトで検索しても出てこなかったので疑問に思っていたのですが、どうやら絶版になっているようです。
(どこかの書店で検索した時に【絶】って書いてあった。)

BOOK・OFFに行ったら『パイの物語 下』だけあったので即購入しました。
結局、20店ほど書店をまわったのですが見つからなかったので『パイの物語 上』はAmazonでポチリ。本体1円でした。


◆内容

『パイの物語』は三部構成の100章で書かれています。
100章で終えることに意味を持たせています。


◆パイの飢え

食べること、食べ物がいつかなくなってしまうことへの不安、飢餓への恐怖というものを感じさせられ、心が痛みました。とても辛い。
映画では、パイが肉を口にせざるを得ないことや本人の痩せていく外側から見えるその過程によってそれを感じるけれど、本ではパイの節々の行動によってそれが表されています。

例えば、大人のパイの家で天井まで届くほどに積まれたキッチン棚の食材(缶詰)や、舟に留まった鳥を疑い無く食料として見るところ、助かった後も日本人調査員のくれる食べ物を催促したり溜め込んだりするところ。

鳥を迷いなく殺したところで、やっと、パイがどれほど飢えてどれほど辛いかに気付かされました。


◆パイという呼び名

本名で馬鹿にされないよう円周率のパイに繋げた、本人がつけた呼び名です。
円周率というのは数字がどこまでも続いていく終わりのないものです。
パイのこの人生、この漂流の時間が永遠に続いていくような、そんな絶望も感じさせる呼び名です。

その一方で、無秩序を嫌い形式を重んじるパイにとっては、ぴったり100章で終えることでなにか意味のある形をこのお話に与えたかったようです。


◆信仰について

パイは、ヒンドゥー、キリスト教、イスラームを信仰するようになります。
信仰するに至るまでがなかなかに興味深く、その後漂流の最中もそれら全ての信仰心や考え方が出てきました。
「宗教」よりも「信仰」に関心がある私としては、パイの信仰についての心理は理解できるものがありました。
これを書いた作者の軌跡と、パイの心の動きに興味が湧きました。


◆パイの涙

大人のパイが漂流の最後を振り返り、(映画で)涙を流すシーンがありました。
映画を観ている時は涙を流すほどのことなのか…と驚き、あまり感情移入はしなかったのですが、本を読んだ時には同じシーンで私もいつの間にか泣いていました。

私はこの部分がとても印象的だったしパイの旅路の象徴として好きなシーンでもあります。




まああとは、絶版なので言ってもしょうがないかもしれませんが、誤植が目立ったかな。

今回は、映画を観てからの原作だったので、どちらの評価も高いままで個人的には良い順番でした。
たいてい、原作読んでから映画を観に行くとガッカリしてしまうので…。

いろいろ書いてはみたものの、本当は、誰も、この物語を語れません。

観た人に委ねられる物語。ぜひぜひご自身の目で感じてみてほしいです。


書きたいことはいっぱいあるのにブログサボってました。

つ・い・に!
インド旅行が決まりましたーーー!わーい!

インド映画を好きになって2年以上が経ち、ついに!という気持ちです。
元々、ずっとラダックとかパンゴン湖に行きたかったんですが、それだけの日程が調整できず……。

今の会社は年末年始が長期休みになることが去年わかっていたので、母親と海外旅行に行こうという話をしていました。
東南アジアの話などをしていたんですが、ふとインド行きツアーがあるのでは?と思ってトラベルコで探し、母に提案しました。

すると母も乗り気に!

結局ツアーは満席で予約できなかったんですが、飛行機の往復だけは取れたので、ひとまず旅行だけは決定しました!わーーーい!

これから現地ツアーとホテルを自分で予約します。
が、現地のことがわからないので意思決定できずうだうだホテルを悩んでます……。

一人で行くなら自己責任でシャワーが出なかろうと虫がいようと「まあしょうがないか」と思えそうなものの、母も一緒だとストレス少ないホテルのほうがいいよなあと思ったり。
しかし母は「山小屋に泊まれるんだし、一蓮托生」と言って私に任せてくれています。
山小屋に泊まるほどのメンタルでインド行くの?(笑)一応街に行くんだけど……。

とりあえず、1日目はアグラ、2日目はジャイプル、3日目はデリー観光と映画ということは決めました。楽しみ。準備をしっかりして行こう。


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