パンゴンツォへの道のり

インドのパンゴン湖に行きたい。 インドのグルガオンで働いています。

2023年12月


2023年6冊目、三浦しをん著『愛なき世界』を読みました。

 ainakisekai

(上下巻で1冊扱いなのか?とは思いつつ……。)

久しぶりに小説を読んだ気がする。

大好きな小説家、三浦しをんさんの文庫本が出ていたのを日本で見つけて買ってきたものです。

愛なき世界というタイトルですが、端的に言うと、植物学を研究する人たちを中心に描いた物語。

三浦しをんさんを好きな理由は、彼女の表現力にあります。
本書でも「薄く瑞々しく張りつめたまま散る花びらが、無数の蛍のように闇に軌跡を描いていた」など、私の表現力に無いものばかりでため息が出るほど。
また、スポーツで優勝するわけでもなく事件が起きるわけでもない、毎日の出来事を興味深く魅力的に描くことができるというのも好きな理由です。

心がほっこりする小説が多いのでぜひ手に取ってみてほしいです。


愛なき世界(上) (中公文庫)
三浦しをん
中央公論新社
2021-11-19


愛なき世界(下) (中公文庫)
三浦しをん
中央公論新社
2021-11-19



2023年5冊目、しばさきとしえ漫画・あーちゃん原案『くいしんぼうの南インド生活』を読んだ。 

southindia1

日本の書店で見つけてパラパラとめくり、インド料理をあらためて知りたいなと思って購入した。

漫画本となっていて読みやすく、かつ、実体験に基づいた内容で、北インド在住者として興味深く読んだ。
南インドの食事の紹介がメインとなっていて、著者が住んでいたマンガロール地域独自の食事などもあり、(身体のスパイスキャパシティーが超過してしまいインド料理をあまり食べたいと思わない状態の)私でもお腹が空いた。

単語の発音などは、現地語やインド英語に則っているためか北インドと微妙に異なっていたりする。

これを読んでインド現地の食事をさらに深掘りするのも良いし、日本の南インドレストランで注文してみるのも良さそう。

ちなみに、カバーを外した表紙の部分が、南インドでよくあるバナナの皮のお皿を模したデザインになっていて素敵です。

southindia2







2023年4冊目、中里成章著『インドのヒンドゥーとムスリム』を読みました。

NakajimaNariaki


南アジア近現代史を専門とする東京大学東洋文化研究所名誉教授の方が書いた、山川出版社の世界史リブレット71。


どうも大学時代にこの本を購入して積ん読していたようで、夏の帰省時に実家の片付けをしていて発見。

インドに住んでいる今だからこそ疑問に思うヒンドゥー教徒とムスリム(イスラーム教徒)との関係を知れたらと思い読んでみました。

(政治的に結構バチバチなんですよ。)


この本は、山川ということからも想像できるように学術的な内容になっています。

90ページほどの小冊子なのですが、読むのに想定より時間がかかりました。

出版は2008年ですが、近現代史を中心とした記載のため、ビジネス書とは違って内容の状況が大きく変化しているということはないでしょう。


そもそも、インドの中世で興亡を繰り返した王朝の支配層が、ヒンドゥー王朝とかイスラーム王朝とかいうような自己認識をもっていたかどうか疑わしい。

王朝を宗教によって二分し、両者が敵対していたかのようにみる視角は、<近代>になってイギリスが持ち込んだものにすぎない。中世インドの政治においては、そういう<近代的な>二分法とは異なるロジックが働いていたようである。


(ダヤーナンダについて)宗教を純化するだけでなく、宗教上の「他者」とのあいだに明確な「境界線」を引き、「他者」を「敵」とみなすことによって、自分たちの宗教集団の結集をはかる、宗教ナショナリズムの方向に足を踏み出したのである。


こういった記載から、普段の生活で感じるモヤモヤが分析され言語化されていることに学問の喜びを感じましたね。


学問的態度、歴史的背景というものがわからないインド人から粘着して絡まれそうですが(なんかあった)、私はこの本の視点に納得するものがありました。


私たちは今を生きているので、こういうことがあったのは過去なのだから今起きてることを水に流せ等とはとても言えませんが、もう少しお互い穏健になれないものかと疲れてしまうこと頻りです。

この宗教だからとはじめから「敵対」する見方に意味なんてあるのでしょうか。

いや、ここの人たちは個人で生きておらずコミュニティで生きているので、それには意味があって大きなことなのだろうと思います。

私とは違うということだけがそこにある。


やはり歴史の一部だけでも知ると今を生きるのが楽になる面はあります。

この本、あまりにも限定的なテーマなので何の目的や需要があって書かれたのだろうと一瞬感じたのですが、インドに関わる人やインド在住の人にはお勧めです。





↑このページのトップヘ