2022年5冊目、谷川俊太郎著『空に小鳥がいなくなった日』を読みました。

tanikawashuntaro

おそらく、結婚に関する詩だとか名言のようなものをインターネットの海に求めていた時に、谷川俊太郎の詩の一説を見つけてこの詩集を読みたくなったのだと思います。

私、詩集を買ったのは初めてかもしれない。
小説やビジネス書、新書等々は色々読んできたけれど。 

最初は読み方がわからなかった。
どこを拾い上げたら良いのかわからなかった。
でも、読んでいくうちに、声に出してみたくなったり、自分の現状に照らし合わせて心に響いてきたりする言葉たちがありました。

朝のかたち

昨夜から思いつめていたことが
果てのない荒野のように夢に現れ
その夢の途中で目覚時計が鳴った
硝子戸の向こうで犬が尾を振り
卓の上のコップにななめに陽が射し
そこに朝があった

朝はその日も光だった
おそろしいほど鮮やかに
魂のすみずみまで照らし出され
私はもう自分に嘘がつけなかった
私は<おはよう>と言い
その言葉が私を守ってくれるのを感じた

朝がそこにあった
蛇口から冷たい水がほとばしり
味噌汁のにおいが部屋に満ち
国中の道で人々は一心に歩み
幸せよりたしかに希望よりまぶしく
私は朝のかたちを見た

祝婚断章

どんな贈物も
ふたりを祝うには小さすぎる
ふたりは互いに自らを贈りあっている

どんな言葉も
愛を語るにはうるさすぎる
ふたりはみつめあう魂の静けさを知っている

どんな儀式も
誓いのためには軽すぎる
ふたりがともにひとつの運命を択ぶ今

そしてどんな旅も
ふたりの未来に遠すぎるということはない
ふたりは青空の部屋で大地の褥に横たわる

必要

私には必要だ
太陽が
必要だ 大地が
その上に立つ不格好な家が

だが必要だろうか
電気掃除機が週刊誌が
もう一本のネクタイが
必要だろうかほんとうに

私には必要だ
愛するものが
私がそれをもっているとき

必要だろうか
大臣や
将軍が

前回の『預言者』を読んだ時にも感じたことだけれど、心に響くものとそれなりに感じるものがそれぞれあって、本として評価するというのが私には難しい。

評価とは関係なく、これは、手元に置いておきたい作品。

心に余裕がなくなった時にまた読むと風が吹いてくれるような気がする。


空に小鳥がいなくなった日
谷川 俊太郎
サンリオ
1990-03T