パンゴンツォへの道のり

インドのパンゴン湖に行きたい。 インドのグルガオンで働いています。

カテゴリ:


2024年7冊目、大江加代著『図解 知識ゼロからはじめるiDeCo(個人型確定拠出年金)の入門書』 を読みました。

ideco

これを読んだ本の1冊に加えるのはどうなんだろう、と思ったものの、内容が良かったので紹介したい。

日本に戻って来てから、日本での資金計画を考えなければならないと思いました。
最近特に新NISAが話題になっていますが、新NISAについて一定期間の実践がなされた本はまだあまりないと思い、先にiDeCoについて知ろうとこの本を読みました。

次の会社では企業型確定拠出年金制度があるため、会社の制度をしっかり確認した上でやるやらないの判断をすることになりますが、そういった点も含めて概要を知ることができてとても良かったです。

しばらく手元に置いておき、必要があれば開いてみたいと思うくらい入門の内容がまとめられていました。
iDeCo気になっているけれど何も知らないという方にお勧めです。





2024年6冊目、サンジーヴ・スィンハ著『インドと日本は最強コンビ』を読んだ。

indotonihon

新書コーナーを歩いていて見つけたものだ。
インド関連本はできるだけ読むようにしてきたが、インド人の目線で書かれた日本の文化やビジネスというのはなかなか無いため非常に興味を持った。

著者は、今を時めくIITを卒業した後、人工知能の研究開発の仕事のため来日。
それ以来インドと日本を繋げるような経済活動に貢献してきた人物だ。

日本の良さをこれでもかと説いていて、自虐的な日本人はとても鼓舞される内容である。
インドに住み、働いていた私としては、何度も比べた部分であり、もう少し厳しいことを言ってくれても良いのにな、と思えるほど褒められていた。
また、2016年発行とは言え、現在にも通ずる内容だ。

タイトルに書かれている『インドと日本は最強コンビ』の真意というのは、日本の標準化の強みとインドの柔軟性を掛け合わせれば相乗効果を生み出せるというものであり、その点は非常に同意である。
一方で、インドで働く中で、「日本式の仕事の仕方をインド人スタッフに共有することが果たして正しいのだろうか」と考え駐在員の方と語り合う日もあったりした。

仕事をしていく上で、長所を見つけ伸ばすことや信念を持つ強さが必要なのだろうとも思わされた。

インドと日本は最強コンビ (講談社+α新書)
サンジーヴ・スィンハ
講談社
2016-01-21



2024年5冊目、福沢諭吉著佐藤きむ訳『学問のすすめ』を読んだ。

gakumonnosusume

この本を購入したのは、大学4年の時、今から10年前だ。
教職のゼミでの課題であり本来は原著を用意すべきだったのだが、ギリギリで行った本屋には置かれていなかったためこれを選び、半分も読まずにゼミに臨んだ記憶がある。

ずっと処分せず、昨年読もうと思ってインドに持って行ったものの積読し、結局日本に持って帰ってきた。
時間もある今読まなければずっと読まない気がして、手に取った。

感動した。
何に感動したのかというと、およそ150年前にこのような考えを持った人がいて、洋学の先駆者として進む方向を示していった、実行していったということ。
『学問のすすめ』の名前や冒頭の「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らずと云へり」は有名だし、福沢諭吉は一万円札の顔だし、慶応義塾大学の創設者として非常に有名である。
とは言え、『学問のすすめ』を通読したことのある人はどれくらいいるのだろうか。
慶応義塾大学生は当然だろうけれど……。
大学時代にしっかり読んでいなかったことが悔やまれるほどであった。

八編で「孫の誕生が遅いことを不孝と言うな」といった内容があり、150年前にこんなことを言えたのかと驚いた。
全十七編あり、特に後編で琴線に触れる文章が多かった。
「学問の本質は生活にどう活用するかということ、本当の目的は読書だけではなく精神の働きにある。」
「心事が高大で働きの乏しい人は、常に不平を抱く。他人の仕事を見て物足りなさを感じたならば、自分もその仕事をやってみよう。」
「東洋人と西洋人とでは、たとえ利害が明らかでも、むやみに相手方の習慣を自分の国に取り入れるべきではない。」
など、ごく一部を抜粋したが現代にも通ずることを説いている。
というか、150年が経過しても社会というのは結局人が構成するものだから本質は変わらないのだろう。

全日本人に読んでほしいというのは過激かもしれないが、まだ読んでいない人がいたら一番にお勧めしたい本かもしれない。
原著を購入したので、近いうちにそちらも読もうと思う。





2024年4冊目、九段理江著『東京都同情塔』を読んだ。

tokyoto-dojoto

この本は第170回芥川賞を受賞し、生成AIを活用したことも相まってか大きく話題になった。
私自身、たまたま芥川賞の受賞インタビューを見たことで初めて知った著者と小説だった。

ザハ・ハディド案の新国立競技場が建設された世界線。
犯罪者をホモミゼラビリス(同情されるべき人々)と呼称し、彼らの犯罪ではなく環境に同情し、彼らに刑務所ではなくシンパシータワートーキョーという高層タワーでの暮らしを提供しようとする計画のコンペに参加する建築家が主人公だ。

巷では、生成AIを使用したことで注目されたが、私は著者の九段理江さんが音楽好きという点に興味を持った。
なんと、著者自ら『東京都同情塔』のプレイリストをSpotifyで公開していたのだから。



これを聴きながら読んでねと言わんばかり。

また、帯に書いてある「あなたは、犯罪者に同情できますか?」という問いについて考えるよりも、私はこれを読んで日本語や言葉をとても大切にしていきたい気持ちになった。

私にとっては登場人物のキャラクターに惚れ込むタイプの小説ではないけれど、音楽のノリも相まって読後感の良い素敵な読書体験になった。

東京都同情塔
九段理江
新潮社
2024-01-17



2024年3冊目、マルクス・アウレーリウス著『自省録』を読んだ。

themeditations

衝撃だった。私の哲学の柱のひとつになるかもしれないとページをめくる手が止まらなかった。

この本を知ったのは漫画『ミステリと言う勿れ』4巻以降の会話で度々使われていたからで、気になって神谷恵美子訳『自省録』を手に取った。

そもそも、これを書いたのはマルクス・アウレリウス・アントニヌスという2世紀に活躍した第16代ローマ皇帝で、五賢帝最後の皇帝として知られている。
高校世界史で必ず勉強する人物だ。

そういう人の本なのだ、とそれほど事前知識を入れずに読み始めた。
読み始めてすぐ、31ページにこんなことが書かれている。

たとえ君が三千年生きるとしても、いや三万年生きるとしても、記憶すべきはなんぴとも現在生きている生涯以外の何ものをも失うことはないということ、またなんぴとも今失おうとしている生涯以外の何ものをも生きることはない、ということである。

雷に打たれたようだった。
内容もさることながら、翻訳のかたい文体にも惹かれ、「ああ、これは私にとって二つ目の哲学の柱になるのかもしれない」という喜びを感じた。

(私はニーチェの『ツァラトゥストラ』を哲学の柱の一つにしており、人生で三つの哲学の柱を持ちたいと思いながら読書に向かっている。)

本書では、アウレーリウスが「自分自身に」書いた内容であるため、君がという記述は自分に対して語ったり言い聞かせたりしているものである。
本当は皇帝になって政務や戦争に赴くことなどせず、哲学者として生きたかったアウレリーウスの、自身への鼓舞を感じて感極まった。

私が感じた主題は3つ。
・自然に従い、与えられた人間としての役目を自覚しありのままを認めて生きる。
・外的要因に左右されないこと。内的要因を見つめ主観であることを理解すること。
・私たちが携わることができるのは過去でも未来でもない、現在だけである。現在に集中せよ。

死という出来事が宇宙の行為のひとつであるようなことも頻繁に言及される。
これは、彼が多くの子どもを自分よりも先に亡くしていることや、自ら戦争に赴いていることを想像すると、彼自身に言い聞かせようとしているのかと感じ涙が出そうになる。

他に、賢帝でも朝起きるのが嫌だったんだなあと励まされるような文章もある。

明けがたに起きにくいときには、つぎの思いを念頭に用意しておくがよい。
「人間のつとめを果たすために私は起きるのだ。」
自分がそのために生まれ、そのためにこの世にきた役目をしに行くのを、まだぶつぶついっていいるのか。……

仏教の考え方に近いような内容もあり、宗教に関わらず、この時代にはこういった思考や考えが起こり始めていたのかなと思わされることもあった。
哲学史をもっと勉強してみたい。

最後に、私の好きな一節を紹介して終わりたい。

君の全生涯を心に思い浮かべて気持をかき乱すな。どんな苦労が、どれほどの苦労が待っていることだろう、と心の中で推測するな。それよりも一つ一つ現在起ってくる事柄に際して自己に問うてみよ。「このことのなにが耐え難く忍び難いのか」と。まったくそれを告白するのを君は恥じるだろう。つぎに思い起こすがよい。君の重荷となるのは未来でもなく、過去でもなく、つねに現在であることを。





↑このページのトップヘ