インド映画『パッドマン 5億人の女性を救った男』(以下、『パッドマン』)が12月7日から全国公開されています。

南インドのタミルナードゥ州出身の社会起業家である、アルナーチャラム・ムルガナンダム氏の伝記フィクションムービーです。


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妻が生理(月経)の時に、部屋から隔離されて過ごす慣習や、清潔なナプキンではなく雑巾かと思うほどの布を洗って繰り返し使うことに対して疑問を持ち、なんとかしたいと思ったのが始まり。

それから自身で試行錯誤、「トライアンドエラー」(トライアンドフォルス)を重ね、「普通」のナプキンの製造に成功。

それに加えて、自分一人で作るのではなく、女性がナプキンを作り販売できるようにする仕組みを作り、女性の自助を推し進めています。



上記のような活動を通して、ムルガナンダム氏は、発明の賞や国からの褒賞も受賞しており、フィクションはあれど映画でもその活動の素晴らしさが描かれています。

そういったムルガナンダム氏の活動については他のたくさんの記事に頼るとして、私は映画『パッドマン』が何をしたかを紹介したいと思います。



というのも、インドで公開されたのは今年の2月9日で、その時から、映画についてのインターネット上での盛り上がりを見ていました。

そして今回、実際に映画を観た時に、ムルガナンダム氏の活動だけでなく、パッドマンチームがやろうとしたことも思い返して涙が溢れてきました。

だから、これも知ってほしいな、と思ったんです。


念の為。私の知る部分は一部で、全ての現象を網羅しているわけではありません。
情報元を明示するためにTwitterリンクをそのまま貼ります。(※不具合で貼れなかったので後程更新します。)



映画『パッドマン』がしたこと1
ムルガナンダム氏の活動を広めた

これは映画の効果として当然ではありますが、元になったムルガナンダム氏の活動と、インドの実情と課題とを、より広く知ってもらうことに繋がりました。知ってもらいやすくなりました。

それも脚本や演出、役者の力、マーケティングあってこそです。



映画『パッドマン』がしたこと2
#padmanchallenge によって生理のタブーを打ち破ろうとした

TwitterやInstagram、Facebookなどで、有名無名問わず #padmanchallenge というものが一時期アップされていました。

やることは、ナプキンと一緒に映った写真をSNSにアップするものでした。

これはインド公開当時の動きで、個人的には、使用する立場としてナプキンを見てしまうのであまり好きではなかったのですが、日本公開後に映画を観て少し理解できました。

男性が、自分の妻の生理の心配をすることも、ナプキンを作って助けようとすることも、嫌がられるんです。
話題に出すこともはばかられるんです。
生理期間中は外のベランダで過ごさなきゃいけないんです。穢れとされているから。

でも、初潮が来たら派手なお祝いをするんですよ。赤飯どころじゃない。なんなん?

(映画は2001年前後のことを描いていますが、変わらない現状もあるので現在形にしています。)

そんな状況の中で、ムルガナンダム氏のチャレンジを皮切りに#padmanchallengeは広がっていきました。

主演メンバー以外でタグ付けされて#padmanchallengeを掲げたトウィンクル・カンナーという人のことも知っていてほしいです。

この方、本映画の原作者でありプロデューサー、そして主演のアクシャイ・クマールの妻である人です。


「私の手にはナプキンがありますが、これについて何も恥ずかしがることはないんです。自然なこと!毎月の生理現象なんです。#padmanchallenge この文をコピーペーストして、ナプキンと一緒に写真を撮ろうと友人に呼びかけましょう。私はアーミル・カーン、シャバーナー・アーズミー、ハルシュ・ゴエンカにお願いしたいと思います。」

そうして、多くの有名人、一般の人たちが #padmanchallenge とハッシュタグをつけ、ナプキンと一緒の写真をSNSにアップしていきました。


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目的は、生理の話題を「普通」のことにすることだったんです。

どこでもどんな時でもナプキンをオープンにして人前で扱うようになってほしいとまでは誰も思ってませんよ。

親とさえ生理のことを話せないせいで、不便を抱えたり、辛い思いをしていたり、病気が進行していったりすることがあります。本当にあるんです。

それを打開したかったんだなあと、映画を見てから気付きました。

※こういったChallengeはやる自由、やらない自由があるので、やってないからダメってことでもないです。



映画『パッドマン』がしたこと3
学校教材としての視聴覚資料ができた

みなさんも学生時代の授業で、映像を通してたくさんのことを学んだと思います。

映画でも出てきますが、公のこととして触れてはならない、男性が関わってはいけないとされていた(されている)生理をテーマに、人間の尊厳を守ることや、女性が継続して勉強することや働ける状況を社会として取り組み生み出すこと、何事も諦めず繰り返し挑戦する姿勢を打ち出しています。

現地の性教育や人権教育がどんなものか私は明るくないですが、映画を通して、若い世代にどんどん理解が広がっていく機会が増えたように思います。

製作側の、若い世代こそ知ってほしいという気概も感じました。

そして、映画が残り続けることで、資料のひとつとして未来の若者にも知る機会を提供できるようになったと思います。

ちなみに、スラムの女性達に無料で映画鑑賞してもらったり、女学生が校外学習として先生と共に映画鑑賞した報告もありました。



映画『パッドマン』がしたこと4
インド国内の200の主要駅にナプキン自動販売機と焼却炉が設置されることに

これ、インドの駅事情を知らずよく読み取れてない私が悪いんですが、焼却炉って…?サニタリーボックスのこと?

とにもかくにも、鉄道会社が駅にナプキン販売機の設置を推進することは発表されており、それに伴って、それを製造する女性の雇用も新しく生まれそうな期待があります。
(インドでゆっくり確認してみますね。)

この他にも、マハラシュートラ州内60ヶ所に渡ってナプキン販売機が設置されたり、一部の映画館では無料でナプキンが手に入るようにもなりました。

というか、マハラシュートラ州の動きが凄かった。
1年間、10,000人の女性に対してナプキンのサポートをするとか、議会のパネルディスカッションで生理の話題を出すとか。
オリッサ州でも無償提供の話が出ていました。



こういった形で、ムルガナンダム氏だけでなく、映画の『パッドマン』チームも、生理のタブーを無くそうと、女性の社会進出をアピールしようと動いてきたのでした。

なので、映画の国連スピーチの部分では、主演のアクシャイ・クマールの熱に圧され、これらを思い返して感泣……。

こういった視点も頭の隅に入れて映画を楽しんでもらえたらな、と思います。


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